株式会社堀場製作所の堀場会長に取材!

こんにちは!表現インターン生の日野です!

今回は株式会社堀場製作所の堀場会長にお話をお聞きしました!

堀場 厚(ほりば あつし)

株式会社堀場製作所 代表取締役会長兼グループCEO
生年:1948年

始めましょうか。

よろしくお願いいたいします!

日野さんのお手並み拝見(笑)よろしくお願いします。

緊張しています(笑)色々とお聞きしたいのですが、まず、経営者として日頃心がけていることなど教えてください。

そうですね、私の場合は創業者が父親ということもあって、子どもの頃から会社という存在が身近にあり、そこで働いている人たちとも家族同様に過ごしていました。会社の生い立ちや、そこでの苦労を見て育ったのはラッキーでしたね。たとえ事業は小さくても、みんな自分たちが作っている物に誇りを持っていました。ビジネスがグローバルに拡大しても、あの頃のスピリット、誇りは絶対に忘れてはいけないと思っています。

小さな時から堀場製作所を継ぐことを考えていらしたんですか?

そんなことはないですよ。私は昔から機械を動かすのが好きでね。小さい頃は飛行機や新幹線の運転手に憧れていましたし、それがいつの間にか戦闘機のパイロットになりたいとまで思うようになっていた。けれど近視のためパイロットになれないことが分かってその夢は諦めました。

後悔はありませんでしたか?

後悔はなかったかな。大学卒業後にアメリカにある堀場製作所の子会社、オルソン・ホリバ * に入社して、同年代の若い社員にパイロットを諦めた話をしたら、「自家用飛行機のライセンスを取ればいい」と教えてくれたんです。そして指導教官と飛行機のオーナーが運良く見つかって、結局パイロットの免許を取ることができました。

すごい!ひょっとしてパイロットの経験は経営にも活かされていますか?

それはありますね。飛行機の操縦と経営にはすごく似ているところがあると思うんです。例えば、飛行機は失速した時は落下していくので、普通はスピードを落としたくなる。しかし、スピードを出さないと上昇しない。だから落下していても、立て直す時はもっとスピードを上げる必要があるんです。

なるほど。

それが経営と一緒だなって思います。不景気の時ほど投資をしないといけない。普通は景気が悪くなると経費を削減して投資も減らす。けれど、それではいつまで経っても立ち直らない。その時に思い切った決断ができるか、それが経営の一番難しいところです。もちろん、スピードを出すことはリスクを背負うということ。地面に激突する可能性だってあるわけですからね(笑)

確かにそうですね(笑)
従業員との接し方について意識していることはありますか?

当社では、従業員の誕生日会を創業間もない頃からずっと続けています。これは創業者である父の発案ではじまり、現在では京都本社で毎月1回、東京では3ヶ月に1回開催しています。少なくとも毎年1回、この誕生日会で国内の約3200名の全従業員に会うことができるんです。逆に言えば従業員も役員に直接会って話す機会が年に1回あるということ。こうしたコミュニケーションの場を持ち続けることが大切だと思っています。

従業員を大切に思っていることが伝わります!

それから、当社は人材の「材」を財産の「財」と表記しています。立派な本社ビルや工場はお金を出せば建てられるが、「人財」はお金を出しただけでは買えない。人こそ企業にとってかけがえのない財産なんです。

日本の教育に関してはどう思いますか?

現在の日本の教育は、良くも悪くも人を平均化してしまっています。テスト問題などでは選択肢の中から回答を選ばないといけない。答えを覚えることも必要だけど、それだけで評価するというのは、枠にはめられているようで良くない。知識を身につけるだけでなく、それらを元に自ら考え、そして新しい答えを導き出す思考力を養うことが必要なんです。否定的に聞こえるかもしれないですが、自分で考えて行動する力を持っていないとグローバルに戦えません。狭い考えで止まっていたら、私はとっくに会社を潰していたかもしれない。そもそも経営で直面する問題は、答えの決まっている入学試験とは違います。全部はじめて出会う問題で、その時々で考えなくちゃいけませんからね。

海外のマネジメントはどうされていますか?

海外の人と仕事をすると「日本はどんな国ですか?」とよく聞かれます。その時、日本人としての誇りを持っていること、自国の歴史や文化を理解していることが大切なんです。勘違いする人も多いけれど、重要なのは「迎合」ではなく「理解」。つまり、どちらかだけでなく、自国と相手の国の両方の歴史や文化を知ること。自国を理解せずただ迎合する人間には海外の人たちはついてきてくれません。

堀場会長が影響を受けた人物、出来事について教えて欲しいです!

一番は創業者である父ですね。父にはたくさんのことを教えてもらいました。あとは、祖父の影響も受けていると思います。京都大学の理学部で教授をしていた祖父は、私をいろいろなところに連れて行ってくれました。また、祖父はとても多趣味で小唄やバイオリンもしていたので、そういった所に影響されて、いろいろなことに対して好奇心が持てるようになったと思います。

重大なことを決めるときに判断基準にしていることは何かありますか?

父の遺言が判断基準となっている気がしますね。

と、いいますと?

父は「明日食べるものがない時と、命がとられると思う時以外はパニクるな」という言葉を残してくれました。そう思って冷静に判断すると最善の判断ができることが多い。トップは最後までパニクってはいけません。

そうやって判断して結果が出ないときは不安にならないでしょうか?

スポーツをしていると、一生懸命練習していても全然結果が出ないときがありますよね?それでも練習を続けていると、ある時急に結果を出せるようになることがある。それと一緒ですね。継続していれば、いつか結果に繋がるものです。やっていないと結果はでませんがね。

もし結果の出ない時が長く続いたらどうすればいいでしょうか?

ビジネスで言えば、リスクを分散させることです。一つのことだけに集中しているとオンかオフかの世界になってしまいます。いくつかの事業を並行して行うことで、どれかで結果が出ていなくいても、違うところでカバーできる。こうやってリスクを管理したり分散したりすることが大切なんです。だからと言って単にいろんなことに手を出せばいいというわけじゃない。基礎的な技術を持って、それをマルチに応用することが大事だと思っています。

最後に大学生に向けてメッセージをお願いします。

私の場合、学生時代からの趣味や興味が今の仕事にも繋がり、活きています。皆さんにもぜひ何か一つ興味のあるものを極めて、大きな柱を持ってもらいたいと思います。それは世界中どこに行っても役立つはずですから。

* オルソン・ホリバ社:1970年、オルソン・ラボラトリーズ社との合併会社として米国に設立。

とても緊張した取材ではありましたが、堀場会長の安心させる笑顔、話し方、内容、間の取り方、どれも勉強になりました!お時間いただきありがとうございました!