株式会社三橋製作所の三橋社長に取材!

三橋 宏(みつはし ひろし)

株式会社三橋製作所 代表取締役
生年:1946年

学生の時はあまり自分を出さなかったと語る三橋社長。経営者になり、会社の危機に直面。自分を出すことの必要性を知り、社長は大きく変化した。どのようにして三橋社長は変わっていったのか?変わるために必要なこととは?

三橋社長は大学生の時、どんなことを考えて過ごしていたのですか?

大学生の時は、ほとんど何も考えていませんでしたよ。大学を卒業したら親がやっている三橋製作所を継ごうと、漠然と思っていたぐらいです。あれこれ考えるようになったのは、年を重ねてからですね。

それはどういう意味ですか?

経営者になる前は自分の上に社長(父親)がいたので、最終決定権はありませんでした。社長になって初めて色々な決断を自分でするようになって、初めて責任の重さに気づきました。そこから多面的に物事を考えるようになりました。

経営者になって一番変化したと思うのはどんなところですか?

私が一番変わったのは、より自分の考えや気持ちを周りの人に伝えるようになったということですね。

……?

経営者になるまで、「自分を出さない」で生きてきたので……。

それはどういったバックグラウンドからでしょうか?

小学校の時は地元公立の学校に通っていました。小学生の時は、親が会社を経営していたということもあって、鼻が高かったですね。わがままで好き勝手、いわゆる「お山の大将」でした。中学に入って、自分よりすごい人がいることを知りました。出鼻をくじかれたんですね。そうして自分の感情を抑えるようになりました。それから経営者になる40歳前まで自分を出さないでやってきました。

それは具体的にどんな感じだったんですか?

例えば、友達と一緒に遊びにいく時、僕は絶対に自分から「〇〇に行こう!」って言わない方でした。

そんな社長が、その後どんなきっかけでご自身を出すようになったのですか?

企業自体が経営的に傾いてしまったんです。経営の資金繰りが苦しくなって、社員に辞めてもらわないといけなくなった時に初めて事の重大さに気づきました。なんとかしないといけない。この経験が経営の転機となって、自分を出していくことにつながりました。しっかり考えて、最良の決断をして、自分の考えや思いをちゃんと出すようにしています。今は出し過ぎってくらいに自分を出してますよ(笑)

そのあとは具体的にどう変わったんですか?

まずは「会社のあるべき姿」「方向性」を示していく必要があると思いました。自分たちはどこに向かっているのか、何を目的に会社を運営しているのかを明らかにする。自分たちの存在意義を明らかにしないことには、社員の皆さんを連れて同じ方向には進めない。私たちはもともと大手企業の下請けでスタートしましたので企業理念がありませんでした。そこで、目指す企業像として3つの経営理念を設定しました。それが以下の3つです。
・付き合って良かったなと喜んでいただける企業づくり。
・使って良かったなと喜んでいただける商品づくり。
・勤めていて良かったなと喜んでいただける企業風土づくり。

目的が定まって周りに話せるようになった。それによって一番変わったところはどんなところですか?

それまである意味何にも分かっていませんでした。自分からは何も伝えないで、話を聞いているだけで「わかったつもり」になっていることに気づきました。先代の社長や当時の専務が話していることを聞いてるだけではダメだということを知りました。自分で伝えるようになってからは、しっかり聞いて、実践して、きちんと物事を理解するようになりました。

社長の「伝える」という姿勢によって、何か社内で変わったことはありますか?

社内で勉強会をするようになりました。エニアグラムという性格診断を用いて
社員同士がお互いを知れるように図りました。

色々な考え方を知ることの必要性をどうお考えですか?

自分が自分のことを知ることで、客観的に長所と短所に気づくことができます。そして、他の人の長所や短所に関しても気づくことができます。お互いを理解できるようになると、無理に短所を伸ばす必要はないと思えるようになります。短所っていうのは努力してもある一定のレベルまでしか伸びないので、それなら長所を伸ばす方が良い。短所はさらけ出して、他の人に補ってもらい、お互いが支え合える会社にしていけたら良いと思ったんです。

なるほど。では、これからの学生にとって必要な能力は何だと思いますか?

しっかり目標を持つことが大事だと思います。私が若い頃はあまり目標を持ってなかったけど目標を持つことによって良い方に変わることができた。なんのために生きてるのか、目標を持つことによっていろんなことが変わると思います。

目標がなかなか定められない場合は……

人間は、貧しくて食べられなかったり、何らかの差別を受けた実体験があれば、それに抗うために目標を持てるかもしれない。けれど昔に比べて物質的にも思想的にも恵まれている現代はかえって目標設定しにくいんですね。だからこそ、機会を創って色々な世界を見てみると良いんじゃないかなって思いますね。

三橋社長の「自分を伝える」ことに対する考え方は「伝えない自分」を経験したからこそのものでありすごく納得しました。ありがとうございました!