細井 和博(ほそい かずひろ)
株式会社インテリア・ホソイ 代表取締役
生年:1970年
建設業は生産効率を上げるために分業制となっており、実際の現場で作業する専門業は29業種にも分けられる。その中の一つが細井社長も経営するインテリア(内装仕上げ工事業)だ。多くの場合、内装はゼネコンなどの建設会社の下請けのさらに下請けとなることが多い。そのため、エンドユーザーであるお客様の顔が直接見えることは少ない。そんな業界で「人と人をつなぐ」ことをコンセプトに会社を経営する細井社長にお話を伺った。
細井社長がいるインテリア業界について教えてください!
建設業は29種類の専門業に分かれています。それぞれの業種には専門の職人さんがいて、これまでは建設業界の仕事を分担してきました。しかし昨今は、少子高齢化で職人さんの年齢も上がってきています。建設業界を盛り上げていくには若い人たちに入ってきてもらう必要があります。しかし、建設業種の中でも内装という仕事はエンドユーザー(お客様)に見てもらいにくいのです。日野さんは、職人さんが壁紙(クロス)の施工をしているところを見たことがありますか?
壁紙(クロス)の施工はないですね……。
建物の外壁や骨組みなど目に見える工程は見ることがあっても、内装を工事しているところはなかなか見る機会ってないんですね。なので今は内装工事の魅力も知ってもらえるように、インテリアに関心がある大学生を呼んで現場を見てもらうなどの活動を積極的に行っています。
なるほど。株式会社インテリア・ホソイのホームページに「人と人をつなぐ企業を目指して、さまざまな事業を展開しています」と書かれています。この「人と人とをつなぐ」にはどのような想いが込められているのでしょうか?
仕事をやっていてやりがいを感じる時って「誰かの役に立ったと感じられた時」だと思うのです。この「感じる」というのが大事です。内装はゼネコンなどの建設会社の下請けのさらに下請けになることも多くて、直接お客様の顔を見ることができません。これでは「役に立った」と感じることが少ないのです。そんな業界で「人と人がつながる」環境を作りたいというのが「人と人をつなぐ」に込めた想いです。
どうしてそう想うようになったのですか?
この会社は私の生まれた年に、父が創設した会社です。私は元々別の会社で働いていて、父の跡を継ぐことは考えていませんでした。ですが私が21歳の時に父の体調が悪くなって、母に「どうしても」と言われてインテリア・ホソイに転職してきました。別に好きな仕事でも専門的に勉強した業界でもなかったので、パッとしない思いを抱えながら仕事をしていました。それから27歳の時に結婚をして、嫌とは言っていられない立場になりました。
そうだったんですね。
28歳の時にあるホテルの改装を請け負いました。その工事ではお客様が直接発注を頂きました。内装をデザインし、お客様の意見を直接聞きながら仕事をしました。無事納品を終えると、お客様から直接「ありがとう」と言ってもらえたのです。今までにない経験でした。うちの従業員にも身に余るようなお礼をしてくださって、私はとても感動しました。この時に初めて「誰かのためにやる喜び」に気づきました。何をやるのかが大事なのではなく、誰のためにやるのかが大事だということを知りました。その仕事がきっかけでお客様の声が聞こえる仕事作りをしようと思いました。
「やりがい」があるから続けられる……
この「やりがい」を知ると仕事が楽しくなると思うのです。ただの作業として目の前の壁紙を貼っているだけなのか?お客様を想いながら部屋を装飾しているのか?同じことをやっていても気持ちの入りようは全然変わってきます。
確かに後者の方が仕事をしていて楽しくなるように思います。
私たちの仕事はお客様に新しい生活空間を提案しているのです。そう考えて仕事をするとワクワクします。自分自身がワクワクしないとお客様もワクワクしません。でも、この「ワクワク」というのが会社に入って1、2年目ではまだ感じづらく、ワクワクを楽しめるようになるまである程度の頑張りが必要ですけどね。
確かに仕事を選ぶときにワクワクすることって大切だと思いました。そうしたワクワクを感じるための仕事選びに関して何かアドバイスはありますでしょうか?
私からはどんな仕事が良いってことは言えないですね。必要とされない仕事なんて無くて、必ず全ての仕事に何かしらの意義があります。どんな仕事が自分とマッチするかを自分自身で判断してほしいと思います。社長の話を聞いたり、社員にも話を聞いてほしい。実際は思ってたのと違う、なんてこといくらでもあります。でも、自分で選んだ仕事ですから、粘り強く、我慢強く「やりがい」が感じられるまで続けてほしいです。それでも合わないと思った時は仕事を変えても良いと思います。
なるほど。それでは今のうちに学生がやっておくべきことって何かありますか?
コミュニケーション能力を高めることですかね。例えば、人と人の間に入る電話の引き継ぎっていうのが昔はみんな当たり前にできていました。けれど今の人はそういう経験をしたことがない人が多いので、人と人との間に入るということが苦手になっているように感じます。できるだけ人と人の間に入ったコミュニケーションをやっておいたら、きっと将来の武器になると思いますよ。