株式会社アグティの齊藤社長に取材!

齊藤 徹(さいとう とおる)

株式会社アグティ 代表取締役
生年:1977年

「行動することが大事」
ありきたりな言葉で、そのフレーズの意味を十分わかっている人も多いでしょう。それでも、行動できずにこの先どうしようかと将来について漠然と考えている人たちがいる。どうすれば「動ける」のか?齊藤社長のインタビューから紐解いていく。

一番になりたかった

はじめに齊藤社長の経歴を教えてください!

僕は高校卒業後、四国の実業団に入ってサッカーをしていました。1年で京都に戻ってきて20歳になる年に今の会社で働き始めました。もともと叔父が創業した会社で、当時はまだ創業期だったので僕が3人目の社員でした。僕はそうして働き始めたけど、周りの友達は大学生になって好き勝手遊んでいたのが羨ましかったですね。僕が彼らに勝るのは収入だと思い、がむしゃらに働きました。朝5時から働き始め、仕事終わるのが21時とか22時、そこから社長や専務とお酒を飲んで深夜1時2時までというのが日常でした。

ものすごく忙しいですね。辛くなかったですか?

仕事は楽しかったですね。しばらくして社長から1つの業務を任されたことがありました。僕はそれが嬉しすぎて、次の日の朝が待ちきれずに寝付けませんでしたもん(笑)。

そんなに(笑)。どうして任されたことがそんなに嬉しかったんですか?

今考えたらですが、小中高と一番になった経験がなかったんです。学生時代では生徒会の副会長をやったり、サッカー部で副キャプテンをしました。高校の時は一選手としてプレーして、そこでもずっと一番になりたかったのになれなかったんですね。だから、仕事を任された時は自分が認められて一番になったようで何より嬉しかったんだと思います。

そういう風に喜びを感じることができたら、仕事をするのが楽しそうです。

仕事を始めてしばらくした頃、僕の人生に影響を与える出来事が起きました。僕を慕って入社したひとつ年下の後輩がいたんですけど、ある時から会社に来なくなったんです。そしてしばらくして辞めてしまいました。僕がその子に事情を聞いたら、「僕は、あなたのロボットじゃない」と言われたんです。そこでハッと気づきました。僕はこれまで、僕と一緒に働いてくれている人を道具扱いしていたんだと。それでも、その後も休む暇もなく考える余裕もなく、ひたすら走っていましたが、この経験はのちの経営者としての人生に深くつながりました。
そして25歳の時にアグティの取締役になったのですが、その頃からですね、色々考えるようになったのは。会社や経営や人生の哲学などを考えるようになりました。

どうして取締役になると考えるようになったんですか?

取締役は会社経営を預かる立場です。つまり一緒に働いてくれる社員の人生を背負うということを教わりました。自分の行動や判断が一緒に働いている社員の人生に関わるかも、と責任を感じたからだと思います。それから会社経営について勉強するようになりました。

今まで自分視点だったところから、社員に目を向けることが考えるきっかけになったんですね。

そうですね。それで35歳の時に代替わりをして、叔父から引き継いで代表取締役になりました。最初の方は会社の最高責任者になったため社員のことが心配で、仕事のことも不安で夜は枕元に携帯電話がないと寝られませんでした。

その不安は今ではなくなったのですか?

なくなったわけではなくて、不安がある状態に慣れました。40歳になったくらいからは、僕らしく仕事ができるようになりました。今でも枕元に携帯電話は置いてますけど。

齊藤社長の言う「僕らしく」とは?

やっぱり僕は2番手が似合ってるなと思ったんです。組織的には社長なので経営のトップなのですが、アグティでは、共に働く仲間が一番で、その仲間を経営者がサポートする。それが僕の経営者としての在り方。共に働く仲間である社員が将来どうしたいのか?それに対して会社を道具として経営者が社員をサポートする、そういうのが自分に合っているなと。

20代という期間

齊藤社長にとって20代は人生においてどんな時間でしたか?

突っ走った期間でした。考える前に動いていました。でも今は、自分のことだけでは動けなくなりましたね。社員のことがあるので、やっぱり少し立ち止まって考えます。若い時に動かなかったら年齢重ねて立場が変わったりするともっと動けないですよ。

そうなんですね!20代でやっておいてよかったと思うことはありますか?

考える前に動いたことはよかったと思います。僕の場合は考える余裕がなかったから動くしかなかった、と言う方が正しいかな(笑)。

そうはいっても、なかなか動くのって大変ですよね。

楽しいと思える方に動いたらいいんです。自分が楽しいことだったら動く。音楽が好きだからコンサートに行く、みたいに。将来にどう繋がるかなんて考えるから動けないと思うんです。繋がるかどうかなんてあとからわかることなんだから今考える必要はないんです。未来は見えないから楽しい。案外振り返ってみると繋がっていますよ。

わあ!すごくその考え方素敵です!自分の興味のある方向に進んでいったらいいんですね!

そうです。自分が感じたことを大切にして、まっすぐに進めばいい。周りからどう見られるかは二の次。今の大学生に伝えるとしたら「思い通りやんなよ、全部正解なんだよ」と言いたいですね。自分でちゃんと選べたら、それが正解になるように動く。周りの人から見たら間違いだとしても、「僕の中では正解なんだよ」って言っていれば大丈夫です(笑)。

社長室に飾ってあった「会社は、働く人のために存在する。」の言葉通り、齊藤社長からは社員のことを大切にする気持ちが伝わってきました。