二十歳の頃の原動力は「お金持ちになりたい」と語る中野社長。決して裕福とはいえない少年期を過ごし、30歳で創業、100億企業を築き上げた中野社長が今もなお行動し続けるわけとは?そして中野社長が今の若者に伝えたいメッセージとは……
中野 猛(なかの たけし)
株式会社ReBoot 代表取締役社長 CEO
生年:1962年
中野社長が働き始めたのは16歳の時なんですよね。
そうですね。家が貧しくて、6畳一間に親子5人で住んでいました。小さい時から新聞配達や牛乳配達をしていましたよ。高校に入ってからも最初の一学期しか通ってなくて、16歳の時から自動車ディーラーで整備士として働いていました。とにかくお金が欲しかったですね。
どうして自動車ディーラーのお仕事を選んだのですか?
小さい頃から自動車が好きだったからです。だけどね、20歳になった時に営業に回されまして。悩みましたねえ。車は好きだけど、別に売るのは好きじゃなかったから。
辞めることは考えなかったんですか?
考えましたよ。でも、辞めるにしても続けるにしても、自分で納得できるまでやってから決めたかった。それで続けたんですけど、最初は全然車が売れなくてね。なんせお客様に対して上手に喋れない。それまで機械と話してたから……
そうした苦労とどのように向き合ったんですか?
それまで社内で推奨されていたローラー作戦(ひたすら一軒一軒回っていく方法)では自分は売れないと思ったんです。でも、観察をしていたらあることに気づいたんです。「車のフロントガラスに貼っているステッカーの色で車検の時期がわかる!」ということに。そこを狙いました。ステッカーを色分けしたデータベースを作って、もう少しで車検がきそうな人に話しかける。そうしたら、面白いように車が売れましたね。結果的に全国で営業2位になることができましたよ。
工夫をして逆境を力に変えたんですね!
それで自信がついた僕は、着物の販売会社に転職しました。
どうして着物……?
バブルの時代で、着物がすごく売れてたんです。給料が自動車ディーラーの2倍も3倍もあってね。とりあえずお金持ちになりたかったので、着物の販売会社を選びました。
そこでも売りまくったんですか?
そうですね。最初は苦労もしましたけど、そこでも工夫をして結果的には24歳で営業本部長になりました。
どんな工夫をしたんですか?
女子寮に目をつけました。京都にずっと住んでいる人は代々受け継がれている着物がありますが、全国各地から京都に来ている女子学生は着物を持っていないことが多くて。そこで女子寮に電話して、見学に来てもらうように話をしたらこれまた飛ぶように売れました。
順調に進んでいるように見えます!
営業本部長になったあとが苦労しましたね。自分はできても、それを人にやらせることの難しさを知りました。悩みましたね。自分は4番打者だけど監督にはなれないんじゃないかって。
そこにはどう向き合ったのですか?
勉強しました。たくさん本を読んだり、いかにわかりやすく説明するかを研究したり。そのおかげで年商6億円の会社に成長させることができました。
おお!想像つかないぐらい凄いですね!そのあと中野社長は30歳で会社を立ち上げるわけですが、その原動力はやっぱり「お金持ちになりたい」でしたか?
そうです。ただ、ある一定までお金を儲けると自分の気持ちに変化が出てきました。「お金持ちになれたのはいいけど、次は僕をお金持ちにしてくれたこの仕事を正当に評価されたい」と思うようになりました。いま「100年続く企業」というのを掲げているんです。目先の利益にとらわれず、社会に貢献するような会社にしたいと思うようになったのもこの頃からですね。
そのために何か意識したことはありますか?
僕自身は学歴がないので、「やりながら覚えよう!」という感覚でした。しかし、勉強って大事なんです。今は研修の時間を増やしたり、自分の考えを文字に起こして情報共有するようにしています。
今の原動力は20代前後の原動力とは違うものですか?
全然違いますね。今の原動力は「責任感」。50歳の頃、厳しい時期がありました。その時、社員に尋ねたんです。「今後の見通しが立たない。幸い借金は無いので、今、廃業すれば退職金も払える」と。彼らの答えは「続けましょう」でした。そこで、僕はこの人たちを守るという責任感で続けることにしたんです。
そこにあったのは「責任感」……
そうです。続ける道を選んだのは正解だったと思っています。
あえて厳しい道を選んだのですね。
そうですね。でも、それが僕らしい生き方だと思います。しんどいことと楽なことだったら、しんどいことの方が勉強になることが多い。自動車ディーラー時代も僕はメカニック専門でしたが、あえて営業の道を選んで良かった。ずっとメカニックをしていたら、修理工場の親方になって楽しい生活を送っていたかもしれない。けれど嫌な方の道を選んで、今何百人の社員に支えられている。元気である限り、今の仕事を続けたいと思っています。
ためになるお話、ありがとうございます。それでは最後に大学生にメッセージをお願いします!
しっかり学んでください。しっかり実践してください。書物から学ぶこともすごく大事なことです。僕は書物から学びたくてもできない家庭環境でした。だからその分、会社を創った時に書物を読んで死ぬほど勉強しました。苦労して自分で身につけたものは、お金には変えられない財産です。自分で身につけたスキルほど大きな財産はない、と僕は思います。