佐々木化学薬品株式会社の佐々木社長に取材!

佐々木 智一(ささき ともかず)

佐々木化学薬品株式会社 代表取締役
生年:1972年

「別にやりたいことがないことは問題ではないんです。それに対してなんとも思っていないことが問題なんです」
学生時代はスポーツ三昧だったいう佐々木社長。部活中は水を飲むことが許されておらず、死にかけたこともあったという。そんな経験が社会人でどう活きたのか?どう今に繋がっているのか?そして大学生に伝えたいこととは?

学生時代はスポーツ三昧

佐々木社長は学生の頃、どんなことをしていたんですか?

中学、高校ではラグビーを、大学ではアメフトをやっていました。中高大一貫の学校に通っていたので、他校の人が受験勉強をしている中、勉強もしないでスポーツばっかりやっていましたね。

当時の部活の練習はどんな感じだったんですか?

私たちの代が、いわゆる根性論の最後の世代でした。練習ではただただ走り続ける。練習中に水を飲むことが許されない時代でした。理由としては「試合は1時間水を飲むことができない。練習で3時間くらい水を我慢できないのなら、試合なんてできるわけがない」といった無茶苦茶なものでした(笑)。毎回意識朦朧となりながら、倒れるやつもいました。その時は「こいつ、こんなんで倒れやがって。もっと練習しろよ」って思ってましたね(笑)。

無茶苦茶ですね(笑)

水が飲めないのは本当にきつかった。雨が降った翌日なんかは幸せでしたよ。水たまりができるから、みんな練習中にその水たまりに喜んで飛び込むんです。泥水なんておかまいなしですよ。社会人になったまだ若い人とかが「学生の頃に戻りたいなあ」とかたまに言っているのを聞くけど、私は絶対いやですね(笑)。ちょうど私らが卒業した3年後くらいに根性論が科学的に正しくないと指摘されて、それからパッとなくなったので、本当に私たちが最後の世代でしたね。

そんな時代もあったんですね。そんなきつかった経験は社会人になってから活きていますか?

働いていてきついと思うことがありませんでした。私の判断基準が「死ぬか、死なないか」でしたから。さすがにあれだけの経験をすれば多少の根性が付いていて、残業が23時、24時が当たり前な時代でしたが、それを過酷な仕事だと感じなかった。今の時代においてはナンセンスな考えだと思います。

今そんな考え方できる人はなかなかいないと思います(笑)。実際に死にそうだと思ったことはあるんですか?

働いていて、死にそうだと思ったことはないですね。それは学生時代に耐性がついたお陰かなとは思っています。ただ、社会人になると、肉体的な重圧はないけど心の重圧というまた別の苦しさがありましたね。部活の時は心の重圧っていっても一時的なものでした。試合が始まる前の緊張だったり、ミスした時の心持ちだったり。練習中に苦痛を感じるとしても、長くても部活が続く4年間とか。でも会社に入ったら、それが少なくとも40年くらいはあるわけですよね。その辺は学生時代の部活と少し違うところかなと思います。

その心の重圧とは、どう向き合っていったのでしょうか?

それは根性とかでどうかなるものではなくて、支えてくれた周りの人のお陰です。私が失敗した時に周りの人が尻拭いをしてくれたり、サポートしてくれたりしてくれたお陰で、今も頑張っていられます。だから、支えてくれている人たちのために頑張らないと、と思います

なるほど。社会人になってから仕事をする上で意識していたことはありますか?

私の場合は大学の先生に教えてもらった一言が全てを決めました。

知ることの大切さ

どんな一言だったのでしょうか?

これは勉強熱心とは言えなかった私の唯一の学びでもあるのですが(笑)。大学の先生が言っていたことで、
「みんなはお金を払って勉強しに来てる。でも会社というところは、お金がもらえる上で学べる」という言葉です。社会人になったら初任給で20万円とかもらっているわけですが、最初から20万円の仕事をしているかって言ったらそうではない。つまり、最初はお金をもらって、その上で学ばせてもらっている。最初は学んで学んで、少しずつ仕事ができるようになっていって、たくさん経験を積んでいくうちに頂く給料に対するだけの仕事ができるようになるんです。周りの人は給料が3年目まで上がらないことに文句を言っていました。私もその先生の言葉がなかったら、同じことを言っていたかもしれません。

なるほど。

これは単に「知っていること」と「知らないこと」の差なんです。私は大学の先生の一言で「知ることができた」。けれど私の同期はそのことを「知らなかった」。「知らないことは人生に壁を作る」っていう言葉があります。知っているだけで、超えないといけない壁がなくなることもあるんです。だから「知ること」は大切だと思いますね。これは特に人間関係を形成する上で大切なことです。人付き合いをする時に、知らず知らずに相手の触れてはいけないことに触れてしまうかもしれない。それも知っているか知っていないかの差なんです。もしかしたら知らないことによって大切なひとを失うかもしれない。人生の本質に対する知識をどれだけ持っているかは大切なことだと感じます。

確かに。知っていることにこしたことはないですね。佐々木社長はどのようにして「知る」のですか?

その「知る」方法にはいくつかの方法があると思っています。本を読む、人から話を聞くなど。私は本を読むのが苦手なので、人を通して知ることにしています。

その時に意識していることがあれば教えてください!

しっかり聞く、聞き切るということです。話を聞いていると、つい聞いてるうちに自分の意見を言いたくなります。聞いてばっかりいると不安になるし、どうやって返そうか考えてしまうものです。でもそこで耐えて、聞いて聞いて聞いてそれから意見を言うようにしているんです。深く聞いていると、相手の言わんとしていることがわかってきます。それをまとめる形で、もしくはそこに触れる形で言う質問や意見は相手にとっても意義のあるものになりますよね。

意識できるように頑張ります。今までの話を聞いていたら、インプットが大事なのかなと思うのですが、アウトプットに関してはいかがですか?

もちろんアウトプットも大事です。むしろ、インプットはアウトプットのためだとも言えます。

大学生に対して思うこと

面接の時などに大学生に対して「やりたいことある?」と聞くんです。そしたら「ないです」と答える。私は別にやりたいことがないことが悪いことだとは思わないんです。一部の天才を除いて、最初からやりたいことがある人なんていないので。でも「探してる?」って聞いたら「探してない」と答える。これは良くないと思っています。探し物は探すから出てくるのであって、探さないと出てくるはずがありません。だから悩んでいる間は凄い良い状態だと思っていて、それに対して何も思っていない状態が一番良くない。天才にはなれなくても、凡人は凡人らしくやりたいことを真剣に探さないといけない。私だって、学生の時は「スポーツで優勝したい」くらいしか、考えていませんでした。もしも何かやりたいことがないのなら、やりたいことが見つかるまで探して欲しいです。「これや!」って思って、次の日に変わったっていいと思う。常にそのことが頭にあって、探究心を抱き続けることが大事。そしてそれをやってみるのがアウトプットになります。

確かに、頭の中で考えるけど、やってみる人は少ない気がします。

私の後輩の話ですが、就職活動で大企業の内定をもらった人がいました。しかし、些細な理由でその会社を入社前に辞めてしまったんです。そして一年就職浪人をして、また立派な会社の内定をもらってました。でもその会社がM&Aでどこかの傘下に入る、という理由でその子はその会社も辞めようかと相談がありました。私はその子に「まずは働けよ」と言いましたが、この子のように、みんな完璧な選択をしたいと思っているけど、なかなか上手くいかない。でもやらなかったら何も変化しません。まずやってみる。そうすると、それが失敗か成功かがわかる。僕は失敗を全く悪いと思っていません。むしろ成功と失敗は同じ類のものと捉えています。失敗の先に成功がある。だから、一番良くないのが「何もしないこと」なんだと思います。

失敗と成功は同じ仲間…..

確かに今の日本の風土は失敗に対して厳しいです。でもそこから逃げ出さずに、やりたいことがなかったら悩んで欲しいし、探して欲しい。完璧な選択でなくても、やってみて欲しい。大概間違っています。なぜならみんな凡人だから。完璧な選択なんて、できるわけがない。だってみんなはまだ20年ちょっとしか生きていないんだから。私の年齢になっても間違いばかりですよ。失敗を恐れず、もっとアウトプットをしたらいいと思います。

編集後記

佐々木社長は話の中でよく、バランスの大切さを説いておられました。インプットだけじゃなくアウトプット。今回の取材で「今すぐ行動しよう」と自分の気持ちが奮い立ちました。